このエントリーは2021年9月5日に「note」で公開したものです
以前BrookのSwitch用コンバーターについて書いていましたが、使い勝手をなんとか工夫して整えてみたものの、「けっこう遅延がある」という仕様が地味にきいていて、常用するのはやめていました。私はシリアスゲーマーではないですし格ゲーも嗜まないというか、やや古いアーケードゲームの移植タイトルを遊ぶのがメインという程度ですが、そんなカジュアルな感じでも、ゲーセンの筐体でプレイしていた時のように自機・キャラクターがレバーの動きについてこなくて、アレ? っと違和感を感じていました。
また、気に入って使っているバーチャスティックハイグレード(VSHG)はPS3世代の製品で、メインを6ボタンで割り切っている仕様なので、コンバーターなどで接続しても現代のハードではボタンの少なさが如実にネックになります。
アケコンは、マルチハード対応、特にSwitchをサポートするモデルは少ないですし、デカくて重いのが常なので、新たに買い増すことも躊躇していたわけですが、Brookからアケコン自作/載せ替え用の基板「UFB(Universal Fighting Board)」が発売されていることを知りました。むしろ知るのが遅すぎたとも言えますが……しばらくアケコン界隈から離れていたのでいたしかたないところでしょうか。
【2023年8月12日】PS5対応の「Brook UFB Fusion」に換装しました
※以下はすべて自己責任で行なう改造です
VSHGを本格的に改修する決意
そこで、これまでボタンの色以外はいじらずに使ってきたVSHGを、ちゃんとカスタムすることにしました。UFBに置き換えればマルチハード対応は実現しますから、あとはボタンを追加する改造をして、現代のハードのコントローラーとして不足のない状態にします。
とはいえ天板の鉄板の加工は手持ちの工具では難しいので、天板はそのままで、側面のプラスチックに穴をあけて追加のボタンを配置します。幸い(?)、8ボタンが必須の格闘ゲームなどはプレイしないハズなので、4つ目のパンチとキック(4P、4K)は右側面に配置して、一応、右手で押せるようにします。このほかにも、現代のコントローラーの仕様とUFBの仕様に準拠するため、PS4のタッチパッドの押下を割り当てるボタンと、UFB独自のTURBOボタンを配置します。LEDについては省略しました。VSHGに追加するボタンは合計4つです。
追加するボタンのサイズは、用意する工具のサイズや電動工具のパワー、また側面の面積にたいして余裕もないので、メインのボタンより一回り小さい、ゲーセン筐体のスタートボタンなどに使われる直径24mmのタイプを選びました。
4P、4Kに割り当てる、追加するボタンのカラーは、(すでにカラーを変えてある)メインボタンに合わせてイエローにしていますが、プレイしている時に側面のボタンは見えないので、視認性の面で意味はなく、ただの雰囲気です(笑)。メインボタンやレバーボールもイエローにしているのは、PS1のソウルエッジと同時発売のアケコン、往年の「ナムコジョイスティック」へのオマージュです。
UFBを準備する
UFBはケーブルをネジ止めで圧着でき、主要なボタンはハンダ付け不要というのもウリなほか、予め基板上にピンヘッダーなどのピンコネクターが付いたバージョンもあります。このピンヘッダーを利用する形で、Brookからはケーブルやファストン端子など一式がセットになっているハーネス(Fighting Board Cable)も発売されています。

私はこのハーネスを先に千石電商の店頭で買って、売り切れだったUFBはAmazonで注文したわけですが、私が説明文を見落としていたのか何なのか、Amazonのストアからは基板上にピンヘッダーが搭載されていないバージョンが届きました。なので、すでに買ったハーネスを活用するにはピンヘッダーを用意してハンダ付けする必要があるということになりました。
とはいえ元々、UFB独自の「TURBOボタン」については、Brookのハーネスには含まれていないので、ケーブルもボタンも自分で用意する必要があります。またUSBは、VSHGで使われているケーブルを流用する形で、UFBに接続可能なピンコネクターで接続しようと考えていたので、結局は細々としたパーツを買い揃える必要がありました。そこでもろもろ必要なものを、千石電商で買ってきました。
コネクターなどを準備する



J6-1
USB用には、基板にハンダ付けするピンヘッダー(4ピン、2.54mmピッチ)と、USBケーブル側に付けるQIコネクター、QIコネクターの内部のピン端子(メス)を買います。USBの信号ケーブルなど4本は被膜を剥いて、それぞれに圧着ペンチ(電工ペンチ)を使ってピン端子を圧着します。
J9
Brookのハーネスを接続する基板のピンヘッダーは10ピン2列で、2.54mmピッチという仕様はUSB用と同じです。これも基板にハンダ付けします。
J4
J4のコネクターは、TouchPad押下ボタン、L3、R3の3つをつなぐ部分で、基板上にJST(日本圧着端子製造)のPHコネクター(2mmピッチ、4ピン、アングル型)をハンダ付けします。ボタン用のケーブルとPHコネクターは、Brookのハーネスに含まれています。
J8
TURBOボタンは、ケーブルなどがBrookのハーネスに含まれていないのですべて自分で用意しますが、基板にハンダ付けするピンコネクターは「J4」用と同じJSTのPHコネクターの一式です。今回私は、TURBOボタン用ケーブルとして、VSHGから取り外した基板についているファストン端子付きケーブルを切り取って流用しました。LEDは省略するので、使用するケーブルはボタン用の2本だけです。ファストン端子(平型端子)を自分で用意する場合、サイズは#110です。

VSHGの4連ボタン
VSHGにはPS、SELECT、L2、R2の4つのボタンがまとまって、独自のボタンとしてひとつの基板上に搭載されています。ボタン4つの信号とGNDが1つで、合計5本のケーブルが基板から出ています。今回は改造らしい改造として、この5本のケーブルにオスのファストン端子を取り付けました。これで、Brookのハーネスのファストン端子をそのまま接続できるようになります。

接続後の確認
BrookのWebサイトでは接続図がPDFで提供されていますので、Brookのハーネスに含まれていないTURBOボタン(J8)や、ピンヘッダーを使うUSB(J6-1)の配線は、これを参考にして作成・接続します。
ただ、2018年に作成されたらしいこのPDFの説明では、ハーネスが使う20個のピンヘッダー(J9)の記載に間違いがあるようで、4Kと2Kの記載が実際とは逆になっているようです。2Kはゲーム機のメニュー操作で決定やキャンセルに使うボタンで、正しく接続されていないと如実に不便ですので、しっかりとチェックが必要です。Switchにはボタン確認モードがあるので、チェックする際に便利でした。
Brook製のハーネスのケーブルは、ボタンごとに長さが微妙に違い、キック側なら1Kが短く、2K、3K、4Kと順に長くなっています。4Kや4Pが基板から遠いと想定しているわけですね。実はこの長さの順番に従って接続すると、上記のような記載ミスによる入れ替わりは起こらず、正しく接続できます(笑)。
買ったパーツまとめ
UFB本体(意図していなかったピンコネクター無しバージョン)以外に買ったパーツをまとめます。リンク先は千石電商です。
- J6-1:ピンヘッダー、2.54mmピッチ、4ピン1列(40ピンからカット)、1個
- J6-1:QIコネクター、4ピン、1個
- J6-1:QIコネクター用ピン、メス、4個
- J9:ピンヘッダー、2.54mmピッチ、10ピン2列、1個
- J4:JST製 PHコネクター、2mmピッチ、4ピン、アングル型、1個
- J8:JST製 PHコネクター、2mmピッチ、4ピン、アングル型(J4と同じ)、1個
- J8:JST製 PHコネクター付きケーブル(TURBOボタン用、4本中2本は不使用)
- ファストン端子:#110、オス、5個。接触防止のカバーも必須(VSHGの4連ボタン用)
- ゲームボタン:三和電子 OBSF-24、4個
- Brookのハーネス:Fighting Board Cable
- ピンヘッダーで4ピン1列が売っていない場合は、1列で10ピンや40ピンのものを買ってニッパーでカットすればOKです。
- J4に接続するケーブルはBrookのハーネスに含まれています。
- TURBOボタン用で、VSHGのファストン端子付きケーブルを流用しないなら、ケーブルとファストン端子のメスを用意します。予めケーブルにファストン端子が付いたセットも売っています。
- ファストン端子のオスは、今回の用途では大した負荷はかからないので、できるなら実物をみて、素材が薄いのものを選ぶことをおすすめします。私は肉厚なものを買ってしまい、圧着ペンチでうまく曲げられず苦労しました。
- UFBのGND線は数珠つなぎ(デイジーチェーン)が基本で、基板に接続できるポイントは限られています。Brookのハーネスを買うのではなく自作する場合、GNDケーブルの引き回しやファストン端子の間隔といった作り方はボタン配置に合わせて工夫する必要があります。
- VSHGのUSBケーブルは、内部には5本目としてシールドからとったGND線もありますが、これはVSHGの天板と底板をつないでいるケースGND線につないでおきました。
- ハンダ関連は省略しますが、上記でQIコネクターの中の圧着端子やファストン端子を付ける場合、必須なのは圧着ペンチです。圧着端子は断面がハート型になるようにかしめるもので、普通のペンチでは付けられません。私はホーザンのP-706を買いました。4000円以上して地味に高いです(笑)。

ケースを加工して収める
VSHGの内部はあまり余裕はなく、側面に追加で4つもボタンを付けるとなると、場所は右側になると思います。穴を開けるためにホールソーと呼ばれる電動工具用の円形ノコギリを用意しました。サイズはボタンにあわせた24mmです。手持ちの電動工具はマキタのペンドライバドリルで、7.2V、締め付け力8N・mという非力でインパクトでもないタイプでしたが、対象の素材がプラスチックだからか、回転数を高めにしてなんとか作業できました。
ただほとんどのホールソーはその構造上、一定の深さまでしか到達しません。ボタンを付けたい側面から内部のバスタブ状の空間まで、2カ所に穴を開ける必要があり、2つめの壁にはホールソーが届きませんでした。幸いにも直径15mmのドリルを持っていたので、この内部の壁(板)に穴を開けることができました。15mmだと三和のボタンではギリギリでしたが、なんとかボタンの端子が顔を出す形になりました。内部の板に開ける穴は20mmぐらいだと余裕があるのではないでしょうか。

UFB本体は、天板を開けたバスタブ状の内部、レバーの左側に置きました。ピンコネクターのせいで高さが出ていますが、内部に収めるには問題ありませんでした。
一方で、メインの押しボタンは、カバーを付けたファストン端子だと高さが出てしまってバスタブの底に干渉するので、端子をすこし曲げます。あとはレバーの動きを妨げないように少し気を使いながらケーブルを収納していけば、なんとか天板が閉まります。Brookのハーネスはケーブルの長さが足りないボタンがあるかも、と作業の途中で不安になっていましたが、VSHG+右側面4ボタンの配置ではなんとか収まりました。

TURBOボタン
取り付けてなお謎だったTURBOボタンですが、名前からなんとなく想像していた通り、連射ボタンでした。詳しい仕組みは分かりませんが、いわゆる“ハードウェア連射ボタン”に近い挙動だと思います。
使い方は簡単で、例えば連射したいボタンが1Kボタンだとすると、TURBOボタンを押しながら1Kボタンを1回押します。すると以後は、1Kボタンの押しっぱなしが連射になります。解除は、同じ操作をするだけです。
連射設定中は、タンッとごく短い押下は1発になりますが、ポンと軽く押した程度だと2~3発は出ます。連射速度の調整はできないようです(多分)。アケアカやカプアケなど、最近のハードで発売される移植タイトルは、ゲームの設定で連射ボタンを用意している場合も多いですが、そうでない場合はこの機能を使うと便利そうです。
認識と使い勝手
ゲームハードの自動認識機能を備えており、PS3/PS4/Xbox 360/Xbox Oneは接続するだけで対応するモードに切り替わります。特定のボタンを押しながらUSBを挿すことで、任意のモードを選ぶこともできます。
Windows 10に接続した場合は、自動的にXbox Oneのコントローラーとして認識されます。Steamなどで問題なく使えます。前述のようにPS4やXbox 360のコントローラーとして認識させることもできます。
Switchは、UFBが自動認識に対応しないため、USBケーブルを接続する際に、1Kボタンを押しっぱなしにしてUSBを挿すというプチ儀式が必要ですが、それ以外は快適です。余談ですが、一般的なコントローラーやコンバーター接続時と違って、UFBのアケコンは、Switch本体の「設定」でボタンの割当を変更することはできませんでした。
我が家ではPS4は引退していてPS5が稼働していますが、UFBはPS5において、PS4コントローラーとして認識されます。UFBを含めて、PS4コントローラーは、ホーム画面の操作やPS4タイトルのプレイは可能ですが、PS5専用タイトルを起動すると、サポートされていないコントローラーという旨の表示が出てゲームプレイに関する操作はできません。
Brookから出ているPS5対応化基板「UFB-UP5」を取り付けると、UFBがPS5コントローラーとして認識されるようですが、PS5専用タイトルかつアケコン必須みたいなタイトルをまだ持っていないので、「UFB-UP5」はひとまず様子見しています。PS5コントローラーでもPS4タイトルはプレイできるので、導入しても問題ないとは思いますが。

UFBの使い勝手そのものは、諸先輩方がたくさん紹介されているのであまり触れませんが、Switchを含むマルチプラットフォームで使えて、遅延もコンバーターなどとは比べ物にならないレベルで、私程度のカジュアルなプレイではほとんど気にならず、かなり快適です。天板の□や○といったボタンの印字は合わなくなりましたが、マルチハード対応だとどのみち合わないので、気にしないことにしています。今回の改造でフルボタン化も果たせたので、ホーム画面やメニューなども問題なく操作できるようになりました。まだしばらくは戦えそうですね。
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