攻殻機動隊 最終カット 背景美術のポスター

 Riekeles Gallery(リーケルス・ギャラリー)というWebサイトで、アニメ映画の背景美術がポスターとして販売されています。ここで映画「攻殻機動隊」の最終カットの背景美術がポスターとして販売されると予告されていたので、7月末に発売された後すぐに注文しました。ドイツのWebサイトで、ポスターの価格は65€(ユーロ)、送料は33€、初回利用の割引が10€で、合計88€でした。販売数は500点と案内されています。

 注文した7月28日の相場は1€=136.85円で、65€は8,895円、88€は1万2,043円です。UPSで発送され、ちょうど1週間後の8月4日に届きました。梱包は丁寧で、ポスターは太めの筒に入れられて、保護の紙と一緒に丸められていました。

「アニメ建築」で紹介している絵をポスター化

 この販売サイトは、シュテファン・リーケルスというドイツ・ベルリンで活動するアートキュレーターのサイトで、氏の活動の流れの中にあるものです。リーケルス氏はアニメの世界における建築や背景美術に魅せられたアニメ研究者でもあり、このテーマで欧州で巡回展を開催したり展覧会のキュレーションを担当したりしています。2020年には、こうした巡回展やキュレーション活動が結実したものとして、1980~2000年代初頭の傑作アニメ映画の背景美術について、制作プロセスも含めて紹介する大型本「Anime Architecture」を発売、日本語訳版は2021年4月に「アニメ建築 傑作背景美術の制作プロセス」(Amazon.co.jp)として発売されています。

 リーケルス・ギャラリーで扱われているポスターは、そうした活動の中でも特に思い入れのある作品が選ばれているようで、この本の内容と連動しています。

 注目すべきは、本の制作にあたって(恐らく展覧会の段階で)、背景美術の制作者や権利を管理する会社に取材し、貴重な資料の提供を受けている点でしょうか。この手の本として公式筋にコンタクトをとるのは当たり前といえばそれまでですが、監督やアニメーターではなく背景美術にフォーカスしているという珍しい点において、本の内容はやはり貴重な資料になっているといえます。

 本に収録されている絵は、制作者から提供されたものをスキャンし直しており、撮影に使われた最終作品であっても、多くは作中では映っていない絵の周辺までスキャンされ取り込まれており、かなり見応えがあります。もちろん背景最終作品以外にもイメージボードやロケ写真なども収録されており、制作過程を追うことができます。

手描き背景美術の傑作

 私が今回買った攻殻機動隊の最終カットのポスターも、作中では映らない、左右の描きこまれていない部分までスキャンされたデータを元に製作されています。これだけでも、原画から改めてスキャンしたものであることが分かり、特別な雰囲気が出ています。

 この最終カットは、描いた小倉宏昌氏の画集の表紙にも使われるなど、小倉氏にとっても思い入れの深い絵のようですね。紙に手描きで制作された時代の背景美術としては傑作と名高い作品です。

 リーケルス氏の本「アニメ建築」でも、攻殻機動隊の章ではトップ絵として使われています。その解説によれば、海上にある人工島のビル群は約300mの超高層建築である一方、周辺の低層エリアは高層ビルでも30階建程度。小倉氏はこの絵について、新しいものと古いものの共存という映画全体のテーマが内包されていると示唆していた、とのことです。

 攻殻機動隊では香港をベースにした世界が舞台ですが、その風景については密集した高層建築を下から見上げるカットや、建築物に切り取られた空や遠景を描くシーンが中心で、街の全体像を見せるカットはほとんど登場しません。それだけに、素子の最後のセリフとともに、ラストで初めてニューポートシティの全容が描かれるこのカットは非常に印象的で、最終的に“世界観を描くこと”に帰着するこの作品においては、その世界観を決定づける重要な絵になっています。

 なお、この最終カットの原画は縦に長いため、このポスターでも一部はカットされています。具体的には原画の下の部分で、作中では丘(?)や素子のシルエットが入り、斜めになったホテルのような建物が、B2相当の比率に近づけるにあたってカットされています。これは全体の1/3ぐらいに相当するので、カットの有無で全体の印象はかなり異なります。

 ちなみに、この原画をカットすることなく原寸で完全に再現した、複製原画とでも言うべき、ソレグラフ版と呼ぶ特別版も販売されています。こちらは印刷が特別に上質なもので、小倉宏昌氏のサインが入り、50点限定で価格は980€(約13万円)です。

 この最終カットのシーンは、作中ではカメラが下から上に移動するため、背景美術を一枚の絵として見ると独特な広角表現になっていますが、このソレグラフ版はそうした原画だけが持つ密かな魅力を余すところなく楽しめます。

サイズと額縁

 ポスターのサイズは500×700mmです。Webサイトに書かれていますが、実測でもその通りでした。B2(515×728mm)よりわずかに小さいサイズで、そうした意図は分からないのですが、B2と比べて、左右の辺はそれぞれ7.5mmずつ、上下はそれぞれ14mmずつ小さい計算になります。既製品のB2ポスター額縁に入れると、額縁がポスターの絵に被らないサイズ、つまり絵が完全に額縁の内側に収まるサイズ、ということになります。それを意図したかどうかは分かりませんが……。

 私は、左右と上下で比率が違うすき間ができるのは微妙だなぁと思ったのと、センターに配置するのもけっこう苦労しそうだなと思ったので、B2の既製品ではなくオーダー額縁にしました。製作寸法(収める用紙サイズ)をポスターそのままの500×700mmとしたものをマルニ額縁画材店に発注しました。額縁は各辺でそれぞれ5mmが絵に被る仕様でしたが、個人的にはポスターを収めてみても気にならない程度でした。木製でそこそこ良いものにしたので、価格は9,220円でした。こちらは8月4日に注文し10日に届きました。

この額縁は各辺で5mm程度が絵の上に被ります ※写真はアクリル板を乗せる前です

 この額縁の表面はペットではなく2mm厚のアクリル板で、B2ぐらいのサイズなら十分に平滑性が保てます(B1だと少し歪みますが気にならないレベルです)。ペットは額縁の角度や自重で歪みやすく、周囲がぐわんぐわんに歪んで映り込むので、明るい日中などはかなり残念な見た目になります。思い入れのあるポスターを収めるなら、多少重くなりますが、表面は2mm以上のアクリル板をおすすめします。

アクリル板あり

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