Arktis A310 Multicam Alpine / アークティス マルチカム

 イギリスのArktis(アークティス)から、2022年の年末にWeb限定・数量限定の「A310 Rainshield Coat V2 Multicam Alpine」が案内されたのを見て、白い迷彩かっこいいなと思って注文してみました。繁忙期なので出荷作業は通常より遅れるとあらかじめ案内されていましたが、年明けの1月5日にDHLで発送され、1月10日に届きました。

 Arktisは欧州各国の軍隊や警備会社に供給するミリタリーウェアを製造しつつ、一般向けの販売も行なっているメーカーです。日本では散発的に輸入して販売している店はあるようですが、まとめて扱っているところを見つけられないので、私はアークティスのWebサイトで直接注文して輸入しています。

 円安が進行したおかげで以前よりも円価格は高くなっていますが、それでもアークティスのウェアは内容を考えると割安と感じられます。

 日本への発送ではイギリス国内向けの20%の消費税(付加価値税、VAT)が免除されるので、服1着の場合、国際発送の高めの送料が相殺されるぐらいになります。為替はともかく、輸入にあたっての高額な送料というネガティブな要素は感じづらい形です。

 今回のA310(1着だけ)の輸入を例にすると、20%のVATを含むイギリス向け価格が125ポンド、日本などVAT非課税の場合は104.17ポンドと表示されています。DHLを使う日本への送料は24ポンドで、日本向けの合計は128.17ポンドでした。

 1月14日の為替レートでみると、125ポンドが1万9,526円、104.17ポンドは1万6,271円、128.17ポンドは2万20円です。ただ、私が決済した12月16日はポンドに対してもうすこし円安だった時期で(12月19日ぐらいから円高が進行)、128.17ポンドに対しての決済額は2万2,503円でした。

DHLでわりと早く届きます

サイズ

 さて、試着ができない個人輸入の衣料となると、気になるのはサイズです。返送・交換は国内通販のようにはいきませんから、サイズ表記を見て詳細に検討する必要があります。A310という型の服はアークティスの中では汎用的な型らしく、固有のサイズ詳細は無く「S 91~96cm」というように胸囲の寸法が紹介されているだけです。

 私は以前に、別の型である「B310」というウェアを買ったことがあり、これは博打気味にサイズを選んだのですが、それを元にアタリをつけたり、手元にあるB310の実寸と汎用型のサイズを比較したりしてサイズ感を推測しました。この以前買ったB310はXSサイズでしたが、完璧なジャストサイズで、窮屈ではないものの、胸囲、腹囲、ソデの長さなどに余裕がなかったので、今回は型が違いますが、ワンサイズ上のSサイズを選びました。

 A310のSサイズは、身長169cmの私にはやや余裕のあるサイズで、これは希望していたサイズ感でした。胸囲などは余裕がありますが、中にインサレーション(断熱服)として服を着たいと思っていたのでちょうどよい塩梅です。

Arktis A310 Rainshield Coat V2 Multicam Alpine

 着てみると、肩口の縫い目はがやや肩の外側に落ちているので、私の体格に対しては「すこしだけ大きめ」というサイズ感です。ソデは腕を下げた状態で親指を覆うぐらいの長さでした。これはそもそもソデが長めというA310固有のデザインに起因するようです。

 スソの長さも下げたソデと同じぐらいの長さがあり、親指の先ぐらいまでの長さです。これは一般的なアウトドア向けのアウターウェアと比べてもすこし長めのデザインだと思います。

 届いた製品の実測もしました。首の襟部分の縫い目を起点にして、ソデは80cm、背中のスソまでが74cmでした。重量は412gでした。

参考までにSサイズの実測値です

防水性が高い仕様

 「A310 Rainshield Coat V2 Multicam Alpine」には2つのポイントがあります。ひとつは「A310 Rainshield Coat V2」として、軽量・防水、シンプルな仕様でウェアとして汎用性が高くなっている点。もうひとつは「Multicam Alpine」(マルチカム・アルパイン)というやや珍しい迷彩模様を使っている点です。

 A310は生地が薄く軽量で、小さく収納できます。サイドポケットの袋を利用する(別途ポーチがいらない)パッカブルタイプではないですが、付属のポーチに収納して持ち運ぶことができるパッカブルデザインです。カッパ代わりにバッグに忍ばせておくということもできます。

 ポケットはサイドポケット2つ、左胸にひとつで、シンプルな構成です。内ポケットはありません。ドローコードはスソとフードの2カ所。フードの後頭部のサイズ調整とソデ先端は面ファスナーです。

 ジッパーはYKK製ではなく滑らかさは少し劣りますが、YKK製のような止水ジッパーが採用されています。正面のメインのジッパーは裏側にストームフラップが取り付けられていて、防水・防風性能を補強しています。閉じるとジッパーの金具が表に出ないガレージも各ジッパーに設けられており、顎に触れる部分は金具が直接触れないようカバーされています。

 生地の防水性能(hydrostatic head)は20,000mm、透湿性も20,000g/m2で、数字だけ見ればかなり高性能です。次世代の「20k/20k」ライナーとしてアークティスのほかのウェアにも展開される予定としています。縫い目はシームテープで防水性が補強されているようですが、裏地もあってよく分かりません(笑)。とはいえ、20,000mmレベルとなるとシームテープがないと実現できないと思われます。

 ソデを長めに、フードも大きめにデザインしたと説明されていますが、フードについては正直なところ大きいというほどでもなく、普通な気がします。表生地はナイロン、裏地はポリエステルのメッシュ生地で、フードからソデの先まで総裏地となっています。

材質表記には日本語も

マルチカム・アルパイン

 生地の迷彩模様は積雪地域向けのホワイトカモフラ、マルチカム・アルパインです。

 迷彩模様は近年になっても新たな考え方や理論を取り入れ開発が続いており、クライ・プレシジョンが開発するマルチカムは赤外線への迷彩効果も考慮された最新の迷彩模様です。基本は4種類で、ノーマル、砂漠向けのArid(アライド)、ジャングル向けのTropic(トロピック)、積雪地域向けのAlpine(アルパイン)です。

 これに加えて黒ベースのマルチカム・ブラックがあり、これは地形に紛れる迷彩効果よりも「権威のある存在感」のための模様で、警察などが都市迷彩として採用し、民生品のウェアやバッグでも使われてマルチカムの名前を広めるのに一役買っています。ちなみにどのパターンも模様の中に小さくMULTICAMとプリントされているので、近くで見るとマルチカムかどうかが分かります。

 軍用品はさておき、民生品をみると、マルチカム・アルパインのような「白い迷彩」のアイテムはまだまだ珍しい存在です。

 アークティスを含むミリタリー/サバゲー向けブランドでは、マルチカム・アルパインを採用したウェアは存在しないわけではなく、探すといくつか見つけることができます。アークティスのウェアはそれらと比較してもかなりガチめのデザインなのが特徴でしょうか。例えば、ほかのブランドではブラックにしがちな止水ジッパーや引手、ドローコード、プラスチックパーツなどもホワイトで統一されており、マルチカム・アルパインの迷彩効果を妨げないようになっています。

 もっとも、街中では遠くから見ると「なんとなく模様のある白色」なので、一般的なカモフラ柄のような凄み・存在感はありません。そういう意味では、明るい色のアウトドアウェアとして着やすい……かもしれません。

 生地は薄くて軽く、防水性能の実際はよく分かりませんが(笑)、パッカブルなカッパとして優秀そうです。雪の迷彩模様という季節性はさておき、基本的にオールシーズン対応と考えてよさそうです。

 真冬でも、中に着るインサレーションがしっかりしていれば活躍できます。私はこの冬、アウトドアリサーチの「M’s スーパーストランドLT フーディ」(Mサイズ)を買ったのですが、VerticalXというポリエステルの人工ダウンが入っており、暑くなりすぎず、かつかなり優秀な保温力を発揮してくれます。ターゲットとする保温力に対して、羽毛のダウンよりも薄くて済むため、モコモコのシルエットにならないですし、重ね着する防水アウターのサイズを選びません。重さもMサイズが実測で305gと非常に軽量で、冬でもとにかく軽いアウターを実現できます。

中はアウトドアリサーチのスーパーストランドLTフーディ

 余談ですが、こうした中に着る薄手のインナーダウン(普通の羽毛を使ったもの)は、ユニクロをはじめさまざまなブランドから発売されていますが、こうした製品と比較して、人工ダウンは羽毛の吹き出し(抜け毛)が原理的に存在しないのが隠れたオススメポイントです。私は薄手の安価なインナーダウンを使っていたことがあるのですが、外出先とか飲食店などで服を脱ぐと、抜けた羽毛が舞い散ったり、中に着ている服にくっついて「服にゴミを付けたままの人」みたいになったりして、それが本当にイヤだったので、薄手で高性能なインサレーションが入手できて清々しています(笑)。


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