出会いがいつだったか忘れてしまいましたが、アメリカ・モンタナ州に居を構えるブランド「EVERGOODS」(エバーグッズ)から面白そうな製品が発売されたので買ってみました。無染色の生地を使った「UNDYED」(アンダイド)シリーズのヒップパック/ヒップバッグ「MOUNTAIN HIP PACK 3.5L – UNDYED」です。日本の公式サイトの通販では16,500円です。
環境負荷を低減する取り組みはどのブランドでも行なわれるようになっていますが、「UNDYED」シリーズは「無染色」の意味の通り、環境負荷低減を目的として染色にまつわる工程を丸々省略する、染色前の生地を使った白一色のシリーズです。最初のラインナップはヒップサック「MOUNTAIN HIP PACK 3.5L」とポーチがサイズ違いで2種類の、合計3種類です。
EVERGOODSは、アウトドアと都市の利用を融合させたデザインの「CIVIC」ラインと、従来的なアウトドアデザインの「MOUNTAIN」ラインの大きく2つがあり、このヒップバッグはMOUNTAINラインの製品です。CIVICラインの同種の製品「CIVIC ACCESS SLING 2L」より少し大きく、ゆるやかな曲線が組み合わされたデザインです。
装備面ではアウターポケットの存在が「CIVIC ACCESS SLING 2L」との大きな違いでしょうか。アウターポケットはジッパーがなく左右の入口がトンネルのように貫通している構造で、メインコンパートメントの中で一緒にしたくないような、濡れたり汚れたりしたパッカブルウェアを仕舞うといったことを想定しているようです。結露で濡れがちな500mlのペットボトルや折りたたみ傘なども入れられますが、アウターポケットのマチは内側に広がり、隣接するメインコンパートメントの容積を侵食する形になるので、活用しやすいかどうかはメインコンパートメントの荷物の入れ具合によります。
メインコンパートメントには内部にジッパー付きポケット、体側に近い薄めのサブコンパートメントには内部にカードやペンなどを収納しやすいオーガナイザーポケットとキーリーシュが装備されており、内装も充実しているのが嬉しいですね。
パターン、縫製、YKKのジッパー、DURAFLEXの樹脂パーツなど、各所はレベルが高く、安心して使える印象です。
背中や腰など体に密着するバックパネルは、荒いスポンジのような厚みのあるパッドと表面のメッシュ生地が組み合わされ、かなり通気性が高い仕様です。
メインのベルトは、バックルを左右2カ所にすることで中央にパーツがなく、胸や腹に固いパーツが接触することがないというデザインです。一般的な製品だとベルトの左右は本体に縫い付けて、中央にバックルひとつというデザインが多いですから、地味にユニークなポイントですね。バックルが直接体に触れないようにバックパネルが伸びているデザインですが、部位的にちょっと固めなので、たすき掛けにするとポジションによっては肩のあたりに異物感を感じることがあります。
だらーんとしがちなメインベルトの余剰部分については、先端にゴムベルトが縫い付けられており、折りたたんだベルトの塊をゴムベルトをくるんと回して固定するというアイデアフルな仕様になっています。
EVERGOODSの製品はブランド名のプリントや刺繍がないのですが、唯一、枡記号(〼)のようなブランドのマークがそれとなく縫い付けられています。ここはベルクロのメスになっていて、ミリタリーパッチのようにベルクロのオスのワッペンなどを貼り付けられる仕様です。EVERGOODSからは、ここに貼り付ける反射素材のパッチ「HI-VIS PATCH BUNDLE」(3種セット)で販売されているので、一緒に買ってみました。
無染色ナイロン生地
UNDYED、無染色の生地についてですが、これは日本的に言うなら「生成」の発想ですが、綿や麻のような天然素材ではないので、少し事情が違うようです。
現代において、ナイロン生地は通常、今回の製品のヒントにもなっている無染色、グレージュの状態で保管され、需要に応じて染色され出荷されるとのことです。染色の過程では大量の排水が出るほか、必要になる熱湯のために電気も多く消費されるとのことで、これを丸々省いた生地で製品を作ろうというのが「UNDYED」シリーズの発想です。
ナイロンは人工的に製造されるわけですから、染色前でも、原理的には天然素材のようなムラがあるわけではありません。しかし、染色の過程で“洗浄”されることが前提なので、そのまま生地として使おうとすると、品質基準の面ではいくつかハードルがあったようです。
まずシミや汚れ、機械油など、従来なら染色過程で洗い流される要素が残っている可能性が指摘されています。また、染色すれば問題にならない色の不均一さ、通常の白と揃わないといった要素が残っている可能性もあります。「UNDYED」シリーズはこれらを了承した上で買う製品になっています。
ほかにも、従来の染色過程は洗浄や熱湯での処理を含むため、生地が柔らかくなったり引き締まったりするといった副次効果があったところを、無染色の生地ではそれらが省略されてしまうため、従来の生地と同様の品質基準にするために苦労したとのことです。
もっとも、私が入手した製品にはどこにもシミや汚れ、油がはねているといったことはなく、ある意味では普通の、綺麗な状態でした。染色された白ではなくナイロンの繊維が製造された時点の素材の色ということで、なんとなくフワっとした印象もあります。光の具合によってはほんの少し黄色がかって見えるような、いわゆる「オフホワイト」といって差し支えない色です。生地表面のPUコーティングがどれぐらい汚れに強いのかはしばらく使ってみないとわかりませんが……。
ジッパーの金具と内部のキーリーシュだけブラックですが、ほかは樹脂パーツも含めてオフホワイトで揃っていて、アウトドアブランドではなかなか珍しいカラーではないでしょうか。ブランドを主張しないデザインかつしっかりとした使い勝手や品質を兼ね備えた、EVERGO