メガドライブ高音質化でアーシオンに備える

ファミコンやスーパーファミコン、ゲームボーイ、メガドライブ向けの“新作”を、当時のカセット(カートリッジ)の形で発売するというケースが増えています。同人サークルがオリジナル作品を実機向けカートリッジで発売、というケースは細々とあったわけですが、2021年2月に「ダライアス エクストラバージョン」のカートリッジ版が登場したことで、少し流れが変わってきたように思います。

その後、メガドライブ向けの“新発売”のカートリッジは、比較的有名なタイトルでは「グレイランサー 30th Anniversary 限定版」(22年10月、コロンバスサークル/メサイヤ、ゲーム内容的には再販)が発売されたほか、ハビットソフトの「シティコネクションMD」(23年9月)は、もしシティコネクションがメガドライブに移植されていたら、というIFを実現したライセンス許諾済みの新作です。もちろん、ほかのオリジナル・インディーズ作品もけっこう多いです。

コロンバスサークルやハビットソフト、フランスのNeofid Studiosなどからは、レトロハード向けのソフトウェア・カートリッジがコンスタントに発売されています。市場が成立するのか感覚的には分かりませんが、そこそこのペースでリリースが続いているところをみるに、互換機や中古ハードがある程度流通し、一定の市場規模が形成されているのかもしれません。

もっとも、コロンバスサークルは互換機を製造・販売しているので相乗効果は見込んでいると思います。デジタル版を併売しているケースもあるので、各社、カートリッジ版は歯を食いしばりながらロマンで続けているだけかもしれません(笑)。件のダライアスは21年発売ですが、2年半ほど経過して新品在庫が値下げされているところを今回ゲットしたので、有名タイトルでもカートリッジ版の販売はさすがに限定的な規模になっていそうです(作りすぎただけかもしれませんが)。

令和に発売された“MD”向けカートリッジ

「ダライアス エクストラバージョン」のカートリッジ版は、セガが許諾していない、つまり「メガドライブ」の名称を使わず対応も謳わない、“MD/MD互換機”向け、という謳い文句で発売されました。これはあくまで「ダライアス エクストラバージョン」で追加的に企画されたカートリッジ版についての扱いですが、ハードウェアとしてのメガドライブはもうとっくにサポートが終了しているので、セガ的には許諾したくてもできないという事情があったようです。このダライアスのカートリッジ版はセガの目が届いている範囲で企画された商品なので、“半公認”のような扱いで発売されているのが面白いところですね。2021年の発売時には、一連の経緯が分かるインタビュー記事が各所で掲載されています。

完全新作「アーシオン」が出る

さて、そうした例が続いている中で、2023年3月、古代祐三氏が、メガドライブで動くという横スクロールシューティングゲームの開発をアナウンスします。同氏が代表を務めるエインシャントが開発するタイトルで、古代氏が音楽とプロデュースを手掛けます。第一報からしてブラウン管で動く様子を撮影した動画が公開されるなど、実機での動作にフォーカスしたタイトルであることがヒシヒシと伝わってきました。

同年6月にはタイトルが「Earthion」(アーシオン)に決定し、メガドライブで動作するソフトとしてカートリッジ版を発売するとアナウンスされたほか、同年9月の東京ゲームショウでは、国内ではSUPERDELUXE GAMESがパブリッシャーとして、2024年にアーシオンのパッケージ版の発売を手掛けること、加えて現代コンソール向けの展開もアナウンスされました。

なにはともあれ、古代祐三氏が音楽を、それも“完全新作”かつ“メガドライブ向け”に手掛けるという点は非常に盛り上がるポイントですから、ぜひともそれを堪能できる環境を揃えたいと思ったわけです。

アーシオン TGSで古代氏が語ったこと

せっかくなので、9月23日の「東京ゲームショウ 2023」ハピネットステージにて開催された、古代祐三氏のアーシオンに関するトークセッションの模様も、YouTubeで公開されアーカイブが残っているので、簡単に内容をまとめておきます。

まずメガドライブ用に開発する点について。世間的にレトロハード向けに作品をリリース例がいくつか出てきている中、古代氏やエインシャントにとってもメガドライブやゲームギアは思い入れがあるハードであり、それら向けのゲームをもう一度手掛けたい、それも移植やリメイクではなく、完全新作のシューティングゲームを作りたいという想いから、今回の開発に至ったとしています。古代氏がメガドライブで手掛けた音楽には「ザ・スーパー忍」や「ベア・ナックル」シリーズなどがあり、同氏の代表作が多い点も、思い入れが強い点として挙げられています。

古代氏自身は、この10年ほどはゲーム音楽の制作が活動の中心で、ゲーム開発現場には久々に復帰する形です。どういう心境の変化があったのか? との問いには、ゲーム音楽を作ることはずっと好きである一方、(1990年設立の)エインシャントはゲーム音楽専門の会社ではなく、ゲーム開発を行なってきた歴史があり、「この令和の時代になんでメガドライブと思われるかもしれないが、初心に戻って、もう一度やりたい」という想いを語っています。

これについては後日、古代氏のX(Twitter)でも補足されています。それによれば、周囲にいろいろと配慮をして自分の気持ちを抑え、何もしないのではなく、「残りの人生好きなことをやりたい。そう思って制作を始めたのが、ザ・スキームリバイバルとアーシオンです。心もちょっと晴れて、あの当時の熱さが少し戻った気がします」と、原点回帰を図った心情が綴られています。

ゲーム内容について詳細はまだ明らかにされていませんが、概要として「シューティングゲームの楽しさをストレートに感じられるゲーム」「ほどよく楽しめる難易度設定」「やりこみ要素も」といった点が紹介されています。自機は一発即死ではなくライフゲージ制で、シューティングが苦手な人でも遊びやすいとしています。

「普通に作っても面白くないですから、今のプログラミング技術を使って、メガドライブとはいえ見た目は派手で、美しくて、今風に遊べるものにしたい。これがメガドライブ!? と驚いてもらえるものになっています」とも語られており、現代の技術に裏打ちされた“令和のメガドライブ新作”ならではの魅力にも期待できそうです。

デモ映像の紹介時には、「ぜひブラウン管で遊んでいただきたい。ドット絵のにじみもぜんぜん変わってきます」と、メガドライブの発色やドット絵の質感についてのこだわりが語られています。また、ステージ背景の多重スクロールや、ボス登場時の派手なアニメーション演出など、技術的な部分も見どころになっているようです。

発売時期は「2024年」ですが、古代氏の希望としては、2024年の夏~秋にリリースしたい、としていました。

メガドライブを手配する

こうして、「メガドライブ実機向けのカートリッジで見逃せない新作が出る。ハードはどうする!?」という状況に至ります。私は以前の引っ越しで、レトロゲーム関連はファミコン・スーファミ・ゲームボーイを残して手放していたのですが(ほとんどのハードを持っていたのですが)、アーシオンにはやはり“本物”が必要だろうということで、メガドライブを改めて調達することにしました。

今回は音楽にも注目していますから、最も音質が良いとされるものを選びます。まず前提として、古代氏も思い入れがあるであろう、ヤマハのFM音源チップ「YM2612」を搭載している、便宜上メガドライブ1と呼ばれる初期型を選びます(後期型のメガドライブ2は微妙に違うチップに変わっています)。その初期型の中で、内部のリビジョンがVA5やVA6と呼ばれる世代が最も音質が良いとされているので、ハードオフのネット通販で写真を必死にチェックして、VA6だろうとあたりを付けた個体を買いました。

VA6を外観から判断する方法はいくつかあるようですが、SNSなどで情報を集めた結果、外箱が「+1」と呼ばれるデザイン(=ソニック・ザ・ヘッジホッグ1本が同梱されているパッケージ)、電源ランプの左右に「AV Intelligent Terminal~」で始まる文字がない、裏蓋のパテント表記がシールである(無刻印・刻印ではない)、電源ジャックの右側に余裕がない、という点をすべて満たす個体を見つけ買ったところ、基板はVA6でした。

おそらく、「AV Intelligent Terminal~」の印字がなく、電源ジャックの右側に余裕がない、という2つでVA6に絞れるのではないかと思います。ただこのパターンはVA6全体では後期のパターンで、VA7に切り替わる直前と思われ、中古市場で頻繁に見つかるわけではないようです。「AV Intelligent Terminal~」の印字がないバージョンには、電源ジャックの右側に余裕があるバージョンがけっこう流通していて、これは、VA6から切り替わった後のVA7だと思われます。VA7は音質的には後退したとされているので、今回はターゲットにしていません。

電源ランプの左右に「AV Intelligent Terminal~」で始まる文字がありません
中央左側にパテント関連の表記がシールで貼られています。この欧米のパテントは海賊版対策で導入された認証技術についてで、VA6は認証技術に対応したバージョンということのようです
端子エリアの窪みで、ACアダプタージャックの右側に余裕がないバージョンです

VA6全体ではもっと外観にバリエーションがあると思いますが、店頭でもネット通販でも基板をチェックできるケースはないので(オークションなどでの改造品は別にして)、確実に絞り込むために、上記の2つの条件のような判別しやすい“確定情報”を頼りにした形です。

なお、背面にあるシリアル番号の最初の3~4桁でもってVA5やVA6だったと報告している例もありますが、判別手法としては使いませんでした。番号の法則があいまいでかなりバリエーションがあるように見受けられ、3~4種類の確定情報があっても、中古市場の商品写真から同じ番号帯を見つけ出すのが困難だったためです。

入手した個体の基板。改造したかのように配線されていますが無改造の状態です
チップ上に「5433」の刻印。左下の印字を参照すると「VA6」であることが分かります

以下の改造は自己責任で行なうものです

高音質ACアダプター

無事VA6を入手できたら、主に低音域に出るバックグラウンドノイズを抑制するために、純正とは別のACアダプターを用意します。“メガドライブ高音質化”界隈では特定のブランドの楽器向けACアダプターが名指しで定番品として扱われていますが、要するにノイズ対策がしっかりと行なわれていれば別のブランド・製品でも問題ありません。

私はCAJ(Custom Audio Japan)ブランドから出ている「PB10.8DC9-2.1」という製品をサウンドハウスで買いました。やはりエフェクターなど電子楽器での利用を想定した製品で、しっかりとしたノイズ対策が謳われた製品です。ちなみに件の定番品の半額ぐらいです。プラグのサイズ、センターマイナスの仕様も問題なく、アンペア数はメガドライブ(単体)を駆動できる仕様の範囲です。

ACアダプターを「PB10.8DC9-2.1」に交換すると、無音部分の低音域で「ブルルル」「ブブブブ」と小さく混じっていたバックグラウンドノイズが一掃され、綺麗になりました。これで最低限の準備が整ったという感じでしょうか。

左はメガドライブ純正のACアダプター。右はCAJ製で、サイズも小型になります

チップコンデンサ交換

メガドライブの実機は、よく「高音域がこもっている」と指摘されます。このため高音質化の改造は昔から試みられてきました。ICの足から音声を取り出すとか、小さいオーディオ基板を追加するとか手法はさまざまですが、近年、“比較的”手軽な手法としてSNSなどを起点に明らかにされたのが、本体基板のチップコンデンサを交換する手法です。

これはヘッドホンICの1番ピンと8番ピンにつながる、フィルターの役割を果たしていると思われる2カ所のチップコンデンサを交換するというもので、コンデンサの容量を少ないものに変更することで、フィルターとしてハードウェア的にカットされてしまっている高音域を戻す、というものです。

ちなみに無改造のメガドライブでステレオ出力ができるのは前面のヘッドホン端子だけです。今回の改造手法はここの周辺に修正を加えつつ、ボリュームスライダーやヘッドホン端子はそのまま使えるという点も、既存の改造手法と違って比較的手軽とされるポイントです。

該当の2カ所のチップコンデンサの容量は、取り外してLCRメーターで簡易的に測ってみたところ、件の改造手法の情報で明らかになっている通り、5600pF(ピコファラド)のコンデンサでした。これの容量を少なくすることでカットオフ周波数を変化させて、高音域の音を戻すというのが改造の内容です。基板上では隣に10kΩのチップ抵抗が付いていますが、これは変更していません。

基板を裏返し、ヘッドホンICの1番と8番につながるチップコンデンサを交換します