SwitchのProコン基板をFireBirdに換装

Nintendo SwitchのProコントローラーの基板を高性能なものに換装する「FireBird For Pro-Controller v2.1」を買ってみました。BOOTHの「ぼんじりちゃんねる公式ショップ」にて、基板3枚入りフルセットが9000円でした。

FireBird for Pro-Controllerは、2023年の夏頃から販売されている、いわゆる同人ハードに分類される基板で、Switch用のProコントローラー(Proコン)の基板を換装し、高性能なコントローラーに変えるというものです。基板3枚セットの場合、Proコンに搭載されている3つの基板すべてを置き換える形になります。

私が買ったタイミングでは基板のバージョンがv2.1、提供されているファームウェアの最新バージョンはv2.04でした。少しバージョンが古いですが、取説のような記事も公開されています。

「ぼんじりちゃんねる公式ショップ」では、FireBirdに換装済みのものや、LEDが映えるシェルに変えたものなど、いろいろなパターンで販売されていますし、別途クリアシェルなどを調達して搭載してもいいと思います。

詳細はぼんじりちゃんねる公式ショップの紹介をご覧いただくとして、ここでは、Switchの発売と同時に入手して使ってきた純正のProコントローラーを被検体として、シンプルに基板を置き換えるだけの換装に挑戦してみました。

FireBird For Pro-Controller v2.1
基板3枚セット
Proコンの純正基板(左)とFireBird(右)。FireBirdのボタン基板はLEDの搭載に加えて、感度向上や誤入力抑制のデザインも施されています
純正スティック(左)とFireBirdのスティック(右)。接点不良やドリフト問題を起こさない高性能なスティック(Ginful製)を搭載しています
メイン基板の裏面。別売りの専用ケーブルでニューファミコンやN64と直接接続できる機能とかも紹介されています

最初に注意しておきたいのは、Proコンは分解するとそこそこネジが多く、ネジの種類は多くありませんが、バラす順番やネジ止めの場所などはしっかりと把握しておきたいという点です。iFixitの分解解説ページも参考になると思います。あと私は換装当初、メイン基板とボタン基板をつなぐフレキケーブルの表裏を間違えるというミスをしてしまいました。フレキケーブルの端子面を基板側に向けて差し込むのが正解です。

フレキケーブルと端子面
端子面を基板側に向けて挿入します

HD振動モーター

FirBirdへの換装は、基本的にはすべて分解して既存の基板を置き換えるだけです。

HD振動モーターについては、判断が必要になります。FirBirdは、任天堂純正のHD振動モーターを流用する形でHD振動に対応でき、これはSwitchのコントローラーとして引き続き使用できる点でも重要だと思える機能です。

FirBirdのメイン基板にはあらかじめコインモーターが取り付けられていますが、純正のHD振動モーターを使う場合、コインモーターは配線をカットするなどして取り外すよう案内されています。

HD振動モーターは、被検体となるProコントローラーに搭載されていますし、Switchに付属の「Joy-con」にも搭載されています。結論からいうと、はんだ付けや独自の加工を施さないという前提なら、FirBirdに加工なしで取り付けられるのは、ProコンではなくJoy-conに搭載のHD振動モーターです。

なぜかというと、Proコンに搭載のHD振動モーターはケーブルで基板に直付けされているのに対し、Joy-conのHD振動モーターは着脱可能なコネクタで接続されているからです。FirBirdには、このコネクタのメス側が用意されています。Joy-conから取り出したHD振動モーターなら、FirBirdに無加工で装着できるというわけです。

公式筋ではProコンから外したHD振動モーターも接続できると書かれていますが、FireBirdの基板への結線方法がよく分かりませんでした。コインモーターを置き換えるのか、あるいは別の方法なのか、もう少し踏み込んで説明してほしいと思った部分です。

Joy-con(左)から取り外したHD振動モーター。両面テープは張り替えます
Joy-conから取り外したHD振動モーターをコネクタで装着。あらかじめ付いていたコインモーターはカットして分離します
FireBirdメイン基板とHD振動モーターを設置したところ

幸いにも(?)、Switch自体の流通量が多く、スティックの動作不良などの理由でJoy-conのジャンク品はそこそこ出回っています。ぼんじりちゃんねる公式ショップでも、Joy-conから取り出したHD振動モーターのみが販売されています。

私は(ジャンクではない)手持ちのJoy-conを分解してHD振動モーターを確保しましたが、このように現役のJoy-conの振動機能を無くしたくない場合は、あらかじめ“Joy-conから取り出したHD振動モーター”を確保するのがオススメです。

余談ですが、Joy-conはHD振動モーターを取り外してもコントローラーとして引き続き使えます。

後日、ジャンク扱いの中古のJoy-conを入手してHD振動モーターを取り出し、自分のJoy-conに戻しました(笑)
換装が終わったところ。ちなみにFireBirdにはバッテリー用基板がないため、ネジは2本余ります写真のProコンのグリップはサードパーティ製品です

振動機能はもうひとつポイントがあり、HD振動モーターの駆動はSwitch専用のようだ、ということです。いくつかのPCゲームや「RumbleX」といった振動確認ツールでも試しましたが、PC接続時にHD振動モーターは動作しませんでした。

もっとも、PCゲームの振動機能は一般的にけっこう大雑把というか、振動するコントローラー側が千差万別なので、最新のコンソールゲームのように振動を緻密に作り込むことはそもそも不可能です。結果的に「振動が大げさで操作の邪魔」とか「あってもなくても、どっちでもいい」とかの印象になりがちです。

個人的には、SwitchのゲームにおけるProコンのHD振動はかなり重視しているので、選択の余地はないといえますが、ひとまずFireBird基板にHD振動モーターを接続した場合、PCゲームにおける振動機能は諦める、という形になるようです。

バッテリーパック

FirBirdの基板は無線接続に非対応で、有線専用になります。そうなるとバッテリーパックも不要になるので、取り外して軽量化も図れるのですが、一点だけ問題が出てきます。バッテリーパックは振動などで外れてしまわないように、半透明の背面カバーで押さえる形になっているのですが、バッテリーパックが存在しないと空洞になるため、背面カバーに力を加えるとグニグニ、ギィギィと歪み、明らかに背面部分の剛性が低下するのです。

なにかダミーパーツでもあればいいのですが、代替案がみつかるまでは、ひとまずバッテリーパックは剛性確保のために装着しておくのがよいのではないかと思います。FireBirdにバッテリー用基板や端子は存在しない(純正メイン基板といっしょに取り外されている)ので、バッテリーパックを装着しても電気的につながることはありません。

バッテリーパックは外してしまうと背面の剛性感がなくなるので、代替案が無い場合は装着しておきます

私はというと、何か樹脂パーツでも見繕えればよかったのですが、適当なものが見つからなかったので、バッテリーパックと同じタテ・ヨコのサイズに切り出したスポンジを詰めることにしました(笑)。バッテリーパックの厚さは6.5mm前後ですが、それの3倍ぐらいの厚さのスポンジで、ギューッと圧縮すると元のバッテリーパックくらいの厚さになる寸法です。スポンジで大丈夫なのかという感じですが、背面カバーがグイグイ凹むとかの極端な剛性感の不足は解消できました。

厚さが3倍ぐらいのスポンジを詰めました

フルカスタマイズLED

FireBirdの基板3枚セットでは、メイン基板に搭載されているスティック部分のLEDに加えて、ボタン基板にもすべてのボタンにLEDが搭載され、発光をフルカスタマイズできます。

これはクリアシェルや光透過型ボタンなどサードパーティ製品の装着を前提にしたものだと思います。シェルやボタンが純正Proコンのパーツのままだと、見栄えは限定的なものになります。

もっとも、Proコンはそもそも表面と裏面にブラックの半透明パーツが使われており、特にスティック部分のLEDはそのままでもよく光が透過します。一方、ボタンパーツの下に敷かれるラバーパッドは、純正だと光を遮ってしまうので、ほとんど光が見えなくなります。

LED発光のデフォルト状態。スタティックモードで、スティックがパープル、それ以外がオレンジに設定されていました。LとRはLEDを横から見ているので透過していますが、ほかのボタンはラバーパッドに遮られてあまり光は見えません
裏からも少し光が見えますが、透過タイプのボタンパーツでないと意味は薄そうです

私のProコンは最初期に買ったこともあってグリップ部分の手触りの劣化が気になるようになり、すこし前にサードパーティ製のカラーグリップに交換済みでした。そこで、このカラーグリップのブルーとレッドにあわせて、FireBirdのLEDのカラーをカスタマイズしてみました。

もともと操作する時に見るわけではなく、気分・雰囲気盛り上げ要素だと思うので、純正のボタンパーツだとほとんど光が見えない「+」「-」や十字キー、「L」「R」系は消灯して、スッキリさせてみました。スティックのLEDは、奥まった位置にあるメイン基板に実装されているため、コントローラーを斜めから見ると、内部の立体感が光で強調されて、なかなかカッコイイ雰囲気になりますね。

ちなみにLEDの発光にはさまざまなパターンが用意されており、ゆっくりとした明滅や、操作したボタンが光るなど、「ゲーミングデバイス」的なさまざまなパターンが用意されています。

なおボタン基板は、感度向上や十字キーの誤入力抑制などLED以外にもメリットがあるので、光らせることに興味がなくても選ぶ意味はありそうです。

コンフィグツール

FireBirdは、必須の初期セットアップ作業にWindowsアプリケーションのコンフィグツールを使うので、Windows PCが必要になります。

メイン機能と言えなくもないスティックについては、初期のキャリブレーションを必ず行なう必要があります。キャリブレーションを一度終えても左スティックがビンビンと過敏に反応していたので、再度キャリブレーションをやり直したら、正常になりました。

公式サイトでは、初期状態ではキャリブレーション画面のポインターが動かないと案内されています。私は、左スティックはポインターが動き、右スティックはポインターが動かない状態でした。コンフィグツールの案内に従いキャリブレーション操作を終えると、右スティックの動きもポインターに反映されるようになりました。

このコンフィグツールでは、キーコンフィグのほか、LEDのカスタマイズ、Switch接続時に表示されるコントローラーのカラーを変更できる機能もあるなど、かなり詳細まで設定できます。スティックの弾き操作の誤入力を解消する跳ね戻りフィルターなどもゲームやプレイによっては重要な機能のようですね。

コンフィグツールのスティックキャリブレーション画面
LEDのカスタマイズ
Switchの画面に表示される色を設定可能
コンフィグツールで設定したカラーでちゃんと表示されました

Switchで使う

Switchに接続してのゲームプレイでは、HD振動も問題なく動きました。コンフィグツールではHD振動モーターの振動の強さも変更できます。振動の感触はやや異なるようですが、コンフィグツールで振動の強さをデフォルトから弱めにするのがよさそうです。

Switch接続時のポーリングレートは純正Proコンと同等ですが、高精度スティックの恩恵はそのままですし、跳ね戻りフィルターも有効です。純正と同じ精度のジャイロセンサーも搭載していますから、基本的なゲームプレイでは問題なくProコンを代替でき、性能的には上位互換という感じになっています。

FireBirdは無線接続に非対応、USB Type-Cケーブルによる有線接続のみです。またNFCも非対応(=amiiboに非対応)です。

私がSwitchでProコンを使うシチュエーションは、Switchをテレビに映してプレイするような場合なので、有線接続は個人的にはそこまでデメリットにならないかな、という感じです。プレイ中にバッテリー切れを心配しなくていいのは有線のメリットですね。

留意しておきたいのは、純正以外のコントローラーから、Switch本体のスリープは解除できない、という点でしょうか。これはFireBirdに限ったことではなく、ホリなどサードパーティ製コントローラーに共通する事項です。

ProコンをPCゲームで使う

基板をFireBirdに換装したことで、Switch用のProコンとしてだけでなく、PCゲーム用コントローラーとしても活躍できることになります。

PCゲームで使う場合、「決定・キャンセル」ボタンの配置問題は悩ましいところですが、ゲーム側で用意されているボタンのキャリブレーション(ボタン配置の初期セットアップ)やボタン機能のカスタマイズを駆使したり、しばらく使って慣れたりすることで、解決できそうかなと感じています。

PCゲーム用、例えばXboxコントローラーやPS系のコントローラーと比べて、Proコンが最も異なるのは、トリガーボタンではないでしょうか。トリガーボタンに相当するProコンの「ZL」「ZR」は、ストロークがほとんどない、軽いクリック感だけのボタンです。というか、ボタンの構造が「L」「R」とほぼ同じです。

ZL、ZRは、LやRと同じ浅いストロークのボタンです

FireBirdが気になる人は、ドリフト問題を解消する高性能スティックや、PC(XInput/DirectInput)では1000Hzのポーリングレートの処理性能といった部分に注目している思いますが、個人的にはProコンの「ZL」「ZR」が浅いストロークと軽いクリック感であるという点、そしてそれをPCゲームで使えるようになるという点は、密かに重視していたポイントでした。

というのも、私は最近「FF14」のストーリーをチマチマと進めているのですが、コントローラー操作ではトリガーボタンを非常に高い頻度で使い、押しっぱなしにする操作も多いため、それまで使っていたXboxのコントローラーよりも、もっとトリガーが浅く、軽いものが欲しいと思い始めていました。Proコンを高性能にしてPCでも使えるFireBirdは、ちょうどこの状況にぴったりと思えたわけです。

実際に使ってみると、トリガーを多用するFF14のクロスホットバーの操作は、目論見通り明らかに楽になりました。

そしてFireBirdの本領発揮の部分でもあるのですが、スティックの操作感が、ちょっと驚くレベルでスムーズになりました。FF14のコントローラー操作では、マップウィンドウの上のポインターをスティックで操作するケースもあるのですが、Xboxのコントローラーと比較してポインターが指先に吸い付くようにスムーズに動き、かなり快適になりました。

もちろんFF14以外でも、スティック操作全般が非常になめらかに動くようになりました。

Gamepad Testerにてチェック。これは2020年11月の発売と同時に購入した「Xbox ワイヤレス コントローラー」で、そこそこ使い込んだ状態ですが、スティックの回転の真円度(画像左下)はエラー率が7~8%になりました。スティックをガイドに沿わせてクルンと回しても、センサーは真円を出力できていないという状態です
FireBird v2.1のスティックを回転させて真円度をチェック。FireBirdのコンフィグツールで何度かキャリブレーションをやり直したところ、真円度のエラー率は驚きの0.0%を達成できました。無操作時のセンター位置もビシっと0,0に決まっています

一方で、そもそもProコンのZL、ZRには深いストロークやアナログ入力判定がないので、例えばリアル系レースゲームのアクセル操作には向かないということになると思います。

また「決定・キャンセル」ボタンの配置問題ではPC系とPS5が揃ったため、PC/Xbox、PS5、任天堂(PS4までのPS系もそうですが)という3つの勢力で分けると、任天堂の配置は劣勢に立たされている(?)ともいえます。特にPC/Xbox系に慣れている人は、自分なりの解決策を見つけられるよう、Steamのコントローラー設定とか、ゲーム側に用意されているカスタマイズ機能も積極的に活用していきたいところです。

余談ですが、PC接続時にXInputを選んでいると、十字キーの右上にある「キャプチャーボタン」(Switchの画面撮影ボタン)は認識されないようです。DirectInputではただのボタンとして認識されますし、Switch接続時もちゃんとキャプチャーボタンとして機能するので、ほぼ問題はありませんが……。

Proコンを高性能化してPCでも使える

FireBirdは、Switch専用だったProコンがPC用コントローラーとしても使えるようになる、なかなか面白い製品に仕上がっています。スティックはドリフト問題を解消した上で高精度なパーツが使われており、ポーリングレートを含めて基板全体が高性能で、標準的なコントローラーの使用感を上回る、高い性能を実感できています。

HD振動モーターについては、入手方法で想定外な部分があり、搭載するとPCゲームの振動機能は非対応になる排他的要素もありますが、純正パーツを流用することでHD振動を高い精度で再現しており、サードパーティ製基板のSwitch用コントローラーとして見ても、独自のポジションを確立しているといえそうです。

最後に、あらかじめ予想できていたことを含めて、私なりの気づきや感想をまとめておきます。

  • スティックの動作はめちゃくちゃなめらかで正確
  • 純正Proコンのシェルやボタンを流用すると、スティック以外は派手に光らない
  • HD振動モーターは「Joy-con」から取り外して流用。ただしパーツ単体での入手難易度は低い
  • HD振動モーターはSwitch接続時のみ動作、PC接続時は動作しない


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