以前に“セイコーMOD”としてベゼルを交換したセイコーのダイバーズウォッチ「SKX009」(通称ネイビーボーイ)ですが、MODパーツを購入した「namoki」ではその後もどんどん種類やバリエーションが増え、なにやら楽しそうなことになっています。そこで、私のSKX009も少し雰囲気を変えてみようと思い、いくつかパーツを買ってみました。

前回はベゼルとベゼルインサート(ベゼルの上の表示板)の交換でしたが、今回はデザインの違うベゼルとベゼルインサートをセットで交換するのに加えて、リューズも交換します。また、リューズ交換時はムーブメントをケースから取り外せる状態になるので、このタイミングを利用して「新品購入時から気になっていたダイヤル上のゴミを取り除く」という作業もすることにしました。
今回購入したベゼルは、前回と同じサブマリーナタイプのベゼルですが、前回はサンドブラスト仕上げだったところを、今回はポリッシュ仕上げのタイプにしてみました。細部も異なり、外周のギザギザの凹の深さが違います。今回の方が凹が深く、特に正面から見るとギザギザがより強調され、イカツイ雰囲気が増しました。namokiではこうしたベゼルパーツの「スリムタイプ」もラインナップされていますが、私が買ったのはノーマルタイプです。


ベゼルインサートのデザインや色はかなり悩みましたが、前回から変えるという意味でも、フラットではなくこんもりとしたドーム型のガラス製ベゼルで、ビンテージをイメージしたと思われるネイビーとオレンジのカラーのものにしてみました。
Webサイトに綺麗な写真は掲載されていますが、自分の手元でどう見えるのかを正確に予想するのは難しいため、ちょっとした博打のような気持ちでしたが、色は想像していたよりも落ち着いたトーンで、いい感じになったのではないかと思います。0時位置の逆三角形の中に夜光塗料のポイントが設けられているのも純正っぽくていいですね。
以下は自己責任で行なう行為です
リューズを交換
作業はまず、裏蓋を開けてリューズを外し、ムーブメントを取り出してダイヤル上のゴミを取り除き、新しいリューズを装着して裏蓋は元に戻し、そこからベゼル交換という手順にしました。作業時はムーブメントに素手で触れないよう指サックをします。親指(Lサイズ)、人差し指・中指(Mサイズ)ぐらいは必要です。
新しいリューズは純正と同じ形状ですが、「S」の刻印が入っていて、ちょっと素っ気ないSKX009のリューズが、上位モデルの純正リューズのような雰囲気になる、というアイテムです。

リューズは、オシドリと呼ばれるパーツを操作することで、スルっと引き抜けます。リューズを日付や時刻合わせの位置に引き出すと一緒に動くのがオシドリです。SKX009に搭載されているムーブメント「7S26」のオシドリは、リューズにくっついている「巻き芯」と呼ばれる棒パーツを上から押さえている形です。オシドリの反対側の端を軽く「上から」押してやることで、シーソーのように、巻き芯を押さえている反対側が浮き上がり、巻き芯がスルっと抜けるようになります。戻す時は特に操作はいらず、慎重に差し込むだけです。




このリューズと巻き芯のセットですが、購入時はバラバラの状態で届きます。巻き芯の根元側はネジになっており、リューズ側の穴(リューズチューブ)にねじ込んでいくだけで装着できます。が、汎用性を持たせるためか、かなり長めになっており、自分でカットする必要があります。測ってみると7mmほど余分になっていたので、電工ニッパーでカットしました(作業時は必ず手元の純正パーツと比較して計測してください)。
切断面に外側に向いたバリが残っているとリューズチューブにねじ込む際に支障が出るので、切断面はヤスリなどで綺麗にします。マスキングテープなどで巻き芯を保護し、平たい部分をラジオペンチの平たい部分でつかみ、リューズを回して最後までねじ込みます。


ここまで作業をして気がついたのですが、外した純正リューズに付いている巻き芯が、少し斜めになっていました(笑)。純正の巻き芯はリューズチューブ部分がねじ込み式ではなく押し込み式で、製造時の調整不足なのか、リューズチューブに斜めに刺さっている形でした。ちゃんとまっすぐな新リューズに変えたところ、リューズ引き出し時のカチっという感触や、曜日・日付の回転操作も軽やかになりました。翻って、今までの微妙にすっきりしない操作感は、この斜めになった巻き芯のせいだったのでは……と思い至りました。


巻き芯は新規のパーツということで、腕時計用グリス「AO-G09a」(9,000円ぐらいします)と塗布用ツール(オイラー)を用意して、ネット上で見つかる「7S26C」のテクニカルガイドに従って注油しました。注油しなくてもとりあえず動くでしょうが、今回の改造は、私的には機械式ムーブメントの勉強みたいな側面もあるので、奮発して揃えてみました。ただし、手先の器用さに自信がある人向けの作業です。


ゴミを除去
リューズを外したタイミングで、ムーブメントをケースから取り出し、ダイヤル上のゴミを取り除きました。ホコリの類いではなく、何か粘性のある液体の飛沫が付着し固まったような感じで、マスキングテープの糊面を押し当てても取れず、ピンの先端で慎重に弾いたらポロっと剥がれました。
外したムーブメントを戻した後は、ケースに残っているインナーベゼル(見返しリング、フランジ)の指標を参考にして、ダイヤルのインデックスとインナーベゼルの指標が揃うよう、ダイヤル(=ムーブメント)の角度を微調整します。



ベゼルを交換
裏蓋を閉めたらベゼルの取り外しです。ここからは前回と同じですが、「コジアケ」などの道具(作業時に“こじる”わけではありませんが)を差し込んでベゼルを浮かせ、2カ所ぐらいに差し込むとバチっと外れます。ベゼルの下側には0~1時と6~7時の2カ所に逆回転防止のツメが浮き上がっているので、これに触れない場所に差し込みます。ケース側の傷が気になる場合は保護テープなどを貼って作業します。

ベゼルの内側にはパッキンが装着されており、予備も1つ付いてきます。念のためシリコン塗布器でシリコンを塗布しました。
新しいベゼルは、裏蓋閉め器を使って押し込みます。ガタつかないサイズのコマを選び、上下からサンドイッチする形にして、ハンドルを回していくと「バキッ」とちょっと心配になる音がしてはめ込みが完了します。




ベゼルがはまって問題なく回転できることを確認したら、ギザギザがいい具合にセンターに来る場所までベゼルを回転させて、付属の両面テープを貼り付け、慎重にベゼルインサートを貼り付けます。これで作業はすべて完了です。


今回のベゼルのポリッシュ仕上げは、純正のケース側面のポリッシュ仕上げとつながりを感じさせる仕上げで、ちゃんと一体感が出ています。ギザギザ具合は、正面から見てもシャープでキリっとした印象につながっていて、思いのほか真面目な雰囲気になっているという印象です。



ネイビーとオレンジのカラーは、ドーム型ガラスもあいまって見え方に濃淡が付きやすく、これがいいアクセントになっています。ネイビーはどちらかというとダークブルーといった雰囲気の濃いめの色で、退色したような薄いオレンジも派手すぎず、私の感覚敵にはちょうどいい塩梅だと思えます。


予想外だったのは、今回のリューズと巻き芯の交換で、純正のリューズよりも快適になったことでしょうか。ダイヤル上のゴミや、巻き芯の調整不足の角度などを鑑みると、ダイヤルに記されている「メイドインジャパン」から期待される製造クオリティには届いていない個体でしたが、ゴミを取り除き、調整不足のリューズを交換して操作感が格段に良くなったことで、納得いくモノになったな、という実感が湧いてきています。

歩度調整も
改めて使ってみると、時刻合わせをしたそばから数秒遅れはじめ、1日で30秒以上は遅れる感じになっていました。そもそも出荷時の精度は-20~+40秒となっているので、最大60秒の幅があるわけですが、もう少し良くならないものかと、歩度調整もしてみました。テンプまわりを触る、非常に繊細さを求められる作業なので、手先の器用さに自信のある人向けの作業です。
素人が一朝一夕でうまくできるものではないと思いますが、ひとまず外出時を想定して、3時位置が下の向きをターゲットにして調整しました。タイムグラファーで見てみると、まず平置きでも片振りがひどかったので、ヒゲ持ちを調整し、平置きでは片振りをほぼ解消できました。

歩度の遅れは緩急針で調整しますが、受け石の反対側をチョンと小突く程度でも大きく変化するのでなかなか手間取ったものの、タイムグラファーの計測で、平置き+11秒、縦位置-6秒という、中間みたいな範囲に収めてみました。追い込むと±3秒とかに調整できるそうですが、そこまではできないにしても、気になったらまた調整して、理想に近づけていきたいと思います。



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